My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
「悪かった、からかって。でも、海がしょっぱいのは本当だ」
「嘘だ」
「本当だって」
「そなたの言う事は信じぬ」
俺の目を見ずに、素っ気なくそう言うソフィア
こんな小さなやりとりすら、どうしようもなく楽しく感じる
思わず零れる笑みを隠す事なく、ゆっくりとそのまま月を見上げた
ヴェントスと唯一同じだと思える、月を
「――夏になると、子供達が海に魚を獲りに行くんだ」
目を閉じると、浮かんでくる
懐かしい、あの日々――
眩しい太陽の光を反射して輝く海
穏やかな波の音に混ざって、子供達の笑い声が響く
浜辺に採った魚を並べて
誰が一番多く獲ったか、競い合った