My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ


「悪かった、からかって。でも、海がしょっぱいのは本当だ」

「嘘だ」

「本当だって」

「そなたの言う事は信じぬ」



俺の目を見ずに、素っ気なくそう言うソフィア

こんな小さなやりとりすら、どうしようもなく楽しく感じる



思わず零れる笑みを隠す事なく、ゆっくりとそのまま月を見上げた

ヴェントスと唯一同じだと思える、月を




「――夏になると、子供達が海に魚を獲りに行くんだ」




目を閉じると、浮かんでくる

懐かしい、あの日々――



眩しい太陽の光を反射して輝く海

穏やかな波の音に混ざって、子供達の笑い声が響く



浜辺に採った魚を並べて

誰が一番多く獲ったか、競い合った


< 208 / 304 >

この作品をシェア

pagetop