My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ


心に浮かぶ悲しさを見つけて

思わず、ぐっと両手を握る


すると




「・・・いつか」

「――え?」

「いつか、私も見てみたい」




遠くに浮かぶ月を見つめながら、そう呟いたソフィア

銀色の光が伸びてきて、その頬を照らす

どこか、切なげに




「ヴェントスだけではない。もっと、いろんな国を見てみたい」




まるで夢でも見る様に、目を細めてそう言う彼女

叶わない夢だと分かっているからなのか

どこか遠い目をして、言葉を落とした




「でも――」



しばらくの沈黙のあと、彼女がポツリと言葉を落とす

それでいて、ハッキリと



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