My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
「とても甘くて美味しいのですよ。春の果物です」
プチリと器用にその実を手で千切ったグレイス
そして、柔らかく微笑んで俺に差し出した
手を差し出すと、そっと俺の手の上にレイズと呼ばれる果実を置いたグレイス
コロリと転がった小さなそれを、じっと見つめる
小さくて真っ赤な果実
瑞々しく、輝いている
恐る恐る、その実を手に取り
思い切って、口に運ぶ
その瞬間、プチっとはじけて
中から甘い果汁が飛び出した