My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
口いっぱいに広がる
甘く、どこか酸味を帯びた果実
「美味しいでしょう?」
モグモグと口を動かす俺を見て、ふふっと微笑んでそう言う彼女に、コクンと頷く
初めて食べたけど
本当に美味しい
緑が沢山あるヴェントスでも
こんな美味しい果実はない
「幼い頃は森に流れる川で遊び、いろんな果実を探しては食べて、よく過ごしていました」
満足そうに俺の姿を見て微笑んだグレイスが
懐かしそうに森を眺めて、そう言う
温かい日差しが漏れる森は、本当に美しくて
まるで時間が止まっている様だった