My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ


「疲れたら草の上に寝転がって、鳴いている鳥の名の当てっこを」

「鳥の?」

「そうですわ。耳を澄ませば聞こえます・・・今も」



グレイスの言葉を聞いて、目を閉じて耳を澄ましてみる

すると、どこからともなく可愛らしい鳥の鳴き声が聞こえてきた




「本当だ・・・聞こえた」




目を開けて笑った俺に嬉しそうに微笑むグレイス

そして、ゆっくりと森の中を歩き始めた




「とても、楽しい時間でした」




そう言う彼女の姿を見て、何故か昨日の夜の事を思いだす

俺の思い出をソフィアと一緒に覗き込んだ、あの時間を



『嘘』と言って、俺を睨みつけた彼女の姿が、思い出される



すると、何故かどうしようもなく会いたくなった

その声が聞きたくなった



―――どうしようもなく



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