My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
立ち止まって、じっと考え込む
そして思い当たった考えを、そのまま口にした
「――ねぇ、グレイス?」
「なんでしょう?」
「この果実、持って行ってもいい?」
彼女の顔を見ないで、そう言う
真っ赤な果実をじっと見つめて
「構いませんけど...どうされました?」
そんな俺の姿を見て、不思議そうに首を傾げたグレイス
その姿を見て、一瞬まずい。と思う
だから、一気に笑顔を作って彼女に微笑みかけた
「後で、食べようと思って」
「後で...ですか?」
「そう。後で」
本当は、彼女に食べさせてあげたい
ソフィアに。