My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ


立ち止まって、じっと考え込む

そして思い当たった考えを、そのまま口にした




「――ねぇ、グレイス?」

「なんでしょう?」

「この果実、持って行ってもいい?」




彼女の顔を見ないで、そう言う

真っ赤な果実をじっと見つめて




「構いませんけど...どうされました?」




そんな俺の姿を見て、不思議そうに首を傾げたグレイス

その姿を見て、一瞬まずい。と思う

だから、一気に笑顔を作って彼女に微笑みかけた




「後で、食べようと思って」

「後で...ですか?」

「そう。後で」



本当は、彼女に食べさせてあげたい

ソフィアに。


< 217 / 304 >

この作品をシェア

pagetop