My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



「死ぬのだ」

「――なんだって?」



思ってもみなかった言葉に目を見開く

そんな俺の姿にも表情1つ変えないで、言葉の続きを紡ぐ彼女





「毒性のある果実なのだ。1粒では何も害がないが、2粒、3粒と食べていくと、しだいに体が痺れてきて――いずれ死ぬ」



最後にそう言いきって、おもむろに手に持っていた果実を口に運ぶソフィア

その姿を見て、はっとする





「ダメだっ」



そして反射的に、果実を持つ彼女の手を掴んで制止した


勢いよく掴んだせいで、彼女の長い金色の髪が大きく揺れる

真っ赤な果実が、月明かりに照らされて不気味に一度煌めいた

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