My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



「嘘だ」



目が点になった俺を見て、もう一度そう言ったソフィア



「――え? どういう...」



嘘?

何が?

どういう事だ?



頭が回転しない俺を見て、ふっと表情を微かに緩めたソフィア



あ....

笑った




「この前の仕返しだ。この実に毒などない」



掴む力の無くなった俺の腕からスルリと抜けて、持っていた実を口に運んだソフィア

小さな口を微かに動かした後、茫然と立ち尽くす俺を見て目を細めた




「そんなに驚くとは思わなかったがな」




そして、悪戯っ子の様に小さく笑った



その表情を見て、なぜか胸が詰まる

息が苦しくなる



何故か

< 225 / 304 >

この作品をシェア

pagetop