My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ


「ほ..本気で焦ったんだぞ」

「そなたが始めに嘘をついたから悪い」



強ばっていた顔がどんどん緩んでいく

ゆっくり弧を描いて、自分の口が三日月形になるのが分かる




「美味しい」



そして銀の箱に残っている果実に手を伸ばして、もう一粒口に含んでそう言った彼女を見て



笑った

心の底から




なんだかもう、無性に嬉しくて



彼女とこうやって話せている事が

彼女が一瞬でも笑ってくれた事が



とても嬉しかった
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