My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
「まだ残党が残っていたのか」
そんなホリスにそう言うと、驚いた様に一度こちらを見たが
また、すぐに視線を前に戻したホリス
「・・・グレイスか」
「――」
「まぁいい」
何も言わない俺を、たいして興味も無さそうに再び鼻で笑ったホリス
そして、何か考え込む様に再び口を噤んだ
再び訪れた沈黙
聞こえるのは、この重苦しい空気には不釣り合いの鳥達の美しい囀りだけ
ふと隣に視線を向ければ、ただ真っ直ぐに前を見つめるホリスがいた
その眼差しは強く、揺らがない
この男の中にも咲く、一輪の花
その周りを守る様に燃える、青い炎
その瞳の強さが、この国を想う気持ちの大きさを知る