My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ


「でも、行って大丈夫なのか?」



今まで行った事がないのなら、何か理由があるはずだ


もちろん、グレイスの言っていた通り

まだガスパルの残党が残っている

危険という不安は、ある。


それに余所者の俺が勝手に市場などに出掛けてもいいのだろうか?




「見てみたいのだ」




そんな俺の不安を消し去る様に、彼女の凛とした声が暗闇に伸びる

その声に反応する様に、視線を彼女に向けた



強く輝く瞳がゆっくり細められる

美しい唇が弧を描く




「見てみたいのだ――この国を」




そう言って、夜空に輝く月を見上げた



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