My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ


押し出される風に乗って、野を駆け下りる

そんな俺の姿を見つけて、前を歩く民が頬を緩めた




「アレン様、お帰りだったのですか?」

「あぁ、昨日の夜に帰ってきたんだ」

「まぁ・・・お疲れでしょうに。また落ち着いたら寄って下さいね」

「ありがとう。そうさせてもらうよ」




片手を上げて過ぎ去っていく顔見知りの夫婦に笑顔を向ける



小高い丘を下って街に入ると、多くの人達から声がかかった

そんな中、林檎が沢山入った籠を両手に抱えた女性が嬉しそうに駆け寄ってきた




「アレン様!! お久しぶりで―――きゃぁっ!」




すると突風の様な風が突然吹いて、バランスを崩しそうになった女性

その姿を見て、慌てて体を支えた


それでも、その反動で持っていた籠から落ちた沢山の林檎

照れくさそうに笑う女性に微笑みかけながら、それらを拾い上げて1つ1つ籠の中に入れていく




「助かりましたわ、アレン様。ありがとう」

「気を付けて」




丁寧に頭を下げて笑う女性に笑顔を返す


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