My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
「――父さん」
バサリと深いオリーブ色のローブを肩からかけて、既に大聖堂の前で待つ父の姿を見つけ声をかける
鍛え抜かれた体は遠くから見ただけで、すぐに父だと分かる
そして俺の声に気付いて振り返った父が、優しく微笑んだ
「あぁ。アレン、すまないな」
磨き上げられた大理石の床に反響して、俺の足音が静かに響く
その音に乗せる様に、父の声が重なった
「いいんだ。 陛下は?」
「もうすぐ来られるはずだ」
「そう」
歩き出した父の隣で、身なりを直しながら足を進める
大理石の床に、俺達2人の姿が映し出される
静寂に包まれた王宮
天まで届いているのかと錯覚しそうなほど、高い天井が真っ直ぐ続く