My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
その光景を見て、一瞬夢の中かと錯覚する
それもそのはずだ
辺りを囲む男達は皆、見た事も無い程美しい顔をしている
身に着けているのは、微かに吹く風にさえなびくような、羽衣の様な真っ白な服
絹の様に美しい髪が、太陽の光を取り込んで透けて見える
そして構えている弓でさえ、黄金の装飾がなされている
まるで天界の使者――
「剣を下ろせ。旅人よ」
あまりの光景に、息をする事も忘れていた
すると、先程も聞こえた透き通る声が耳に届いて我に返る
バッと隣を見ると、弓を構えたままの男達の間から1人の男が現れた
「聞こえなかったか? 剣を下ろせ」