My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ


一歩も動く事ができずに、目の前で弓矢を構える男達を見つめる


下手に動けば、状況を悪くしかねない

――まぁ、これ以上悪くなりようがない気がするが





「そなたは――ヴェントスの国の者か」



ゆっくりと透き通った茶色の瞳を動かして、俺の姿を捕らえた銀色の髪の男

俺の身に着けている衣服を見て、瞬時にそう判断した

森の外の者達と違って、ここの者達は他国の事は知っているのか――?



パキッと小さく枝を踏み鳴らし、俺に近づく銀色の男

俺の心を読む様に、じっと俺の瞳を見つめている




「――あぁ。そうだ」

「なぜ、遠く離れた西の国まで?」

「分けあって、クレムまで向かっている――だが・・・」

「ゲイルに襲われた」



俺の言葉を遮って、言葉を落とした銀色の男

そして、チラリと地面に横たわる父を見下ろした

< 60 / 304 >

この作品をシェア

pagetop