My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
一歩も動く事ができずに、目の前で弓矢を構える男達を見つめる
下手に動けば、状況を悪くしかねない
――まぁ、これ以上悪くなりようがない気がするが
「そなたは――ヴェントスの国の者か」
ゆっくりと透き通った茶色の瞳を動かして、俺の姿を捕らえた銀色の髪の男
俺の身に着けている衣服を見て、瞬時にそう判断した
森の外の者達と違って、ここの者達は他国の事は知っているのか――?
パキッと小さく枝を踏み鳴らし、俺に近づく銀色の男
俺の心を読む様に、じっと俺の瞳を見つめている
「――あぁ。そうだ」
「なぜ、遠く離れた西の国まで?」
「分けあって、クレムまで向かっている――だが・・・」
「ゲイルに襲われた」
俺の言葉を遮って、言葉を落とした銀色の男
そして、チラリと地面に横たわる父を見下ろした