秘密な蜜愛
サワサワと頬を撫でる風。
こんなに綺麗な夕日を見たのは、いつぶりだろう。
その空に向かい手をかざせば、まるでその真ん丸い夕日に吸い込まれてしまいそうな。
そんな錯覚さえ覚えた。
「おーい、ユマ。」
突然耳に届いたその声に振り向くと、何個目かのダンボールを開け始めている涼。
ベランダから見えるだけでも、もう既に5つのその中身が空っぽになっていた。
「これで最後だから。自分でやんなよ。」
「あ、うん。ごめんね。ありがとう。」
その言葉通りにすぐに体を動かせた私は、ピシャリと網戸を閉めた後、目の前にしゃがむ存在へと足を進ませた。
今日から新しい生活が始まる。
そんな期待を感じながら…。