144のカウントダウン
6日目
第16話〜気持ちから心へ〜
うむむ。
今日は土曜日だけど、登校日。
まあ、夏パの相談もしたかったからちょうど良かったんだけどねっ!
「あっ!光ぅ~!」
「お?咲来?」
あ・・・。すごい久しぶりな気がする。
「あのさ、夏パってやるの?」
「え?やらないの!?」
思った以上に即答だった。
「あ、それがさぁ。よくわかんないんだよね。」
「はい?」
まあ、理央が言い出したんだっけ?
でも、それはカノちゃんと光が付き合ったからで、理央は気まずいのであって・・・。
でも、この際アタシと理央は付き合ってるのであって。でも、気まずいコトには変わりない…?
「あ、また確認してから来るね!!」
「はあ・・・?」
アタシは動揺する光をその場に置き去りにして真っ先に理央のもとへ向かう。
「ねえ!理央!?」
「ンぁ?」
朝だからか、理央はいつになく眠そうだ。
「あのさ、夏パって、結局どうすんの?」
「あぁ、好きにやれば?」
「ん??」
「もうさ、気まずいとかどうでもよくなってきた。」
「じゃあ、やるね!」
「ん――。」
理央は、今にも眠る勢いで返事を返すのだった。
アタシは廊下を猛ダッシュ!
『また来る!』と光に言ったものの『待ってて!』と言い忘れていたのだ。
「ひーかーるーう!」
「うぅっわ!?」
「夏パ!予定どうりにやるから!」
「う、うん?」
「って、カノちゃんにも伝えといて!」
光は動揺を隠せないみたいで、頭のまわりにクエスチョンマークをうかべる。
っと、そこにカノちゃんが来た。
「光く…。あ!サクちゃん!!」
「あ、カノちゃん?」
「お・・・。」
カノちゃんの瞳は、今まで以上にイキイキとしている。
ウェーブが少しかかった、長く細い髪がゆれる。
「お・・・おはよ!」
「おはよ!」
ぎこちなくなるのはアタシだけだったので、なんだか申し訳なかった。
光は心配そうに見つめている。
「ねえ、サクちゃん!理央くんと同じクラスだったよね?」
「う…、うん?」
「いいなぁ~!」
「え?」
「私は光くんと離れているでしょう?だから、なかなか会えないの。」
光は、日焼けした肌を赤らめる。
「あっ!あのさ、咲来。」
「む?」
「良かったな…。」
光はそれきりさって言った。
『良かったな。』の一言には、色々な想いが込められているようだった。
「さ、サクちゃん。」
「アタシね、光くんと一緒になれて良かった。」
「・・・!」
「サクちゃんは、理央くんと一緒になったでしょ?」
「・・・うん?」
あんまり自信がなかったのは、自分から告白していないからであろう。
あくまでアタシは「OK」を出した側なのだ。
恋を叶えたのは理央であって。
恋に誘われたのがアタシ。
光と花音は、2人で恋を叶えた。
アタシは、なんなのだろう?
「だから、自信とか。自分の気持ちとかに、疎くなってるんじゃないかなって。」
「うとい?」
「なんてゆうかな・・・。」
「?」
「サクちゃんの胸にあるものは『理央くんが好き』ってゆう恋心でしょ?」
「う…ん?」
「でも、気持ちが薄れていってるんじゃない?」
「どうゆうこと?」
「理央くんなら、上手に説明できると思うな。」
「え?」
「ごめん。私ったら、なんだかよくわからなくなって来ちゃった。」
とても分かりずらい。
でも、その気持ちはよくわかった。
伝えたいままに伝えることができない。気もちは喉の、すぐそこまで来ているのに・・・。
「大丈夫だよ。わかるから。」
カノちゃんには、お世辞に聞こえたかもしれない。
でも、カノちゃんは安堵の笑みを浮かべる。
「明日、絶対行くから。」
「うん。おいでよ!」
涼しい風が、髪をすり抜ける。
暑い真夏には、すこし涼しげな「青い春」のような・・・。
心が弾む。