144のカウントダウン
第5話〜光の気持ち〜
光が、教室の窓から夕陽を眺めてる。
表情はよく見えない。
光が所属している部活動は「美術部」カノちゃんと同じだ。
スポーツの才能に恵まれているのに、美術部というのは、みんな以外そうにしていたが
絵の才能もなかなかだ。
美術部は課題が終わりしだい解散なので、すぐ終わる。
光は、アタシ達が終わるのを見計らっているのだが、たまに夕陽を眺めるのも日課らしい。
「ひーかーる!」
「おわっ!?・・・。なんだ咲来か。」
「何だとは・・・。」
「わかってるよ『なんだとはなんだ?』って言いたいんだろ?」
光は無邪気に笑う。
そういえば・・・。
「光って、悩みとかなさそう・・・。」
「ヨク言われるけど。少しくらいあるよ。」
光はわらう・・・。
「だって、常に笑ってるし。」
「悩みのナイ人間なんていねよ・・・。」
「お、名言。」
「茶化すなよ。ホントだって!」
「・・・。ふ~ん。」
なんといっていいかわからず。適当な相槌をしておく。
「教えてやろうか?」
「・・・。」
「特別に、教えてやってもいいぜ。」
「・・・。聞いてほしいなら素直に言いなよ。水臭いな・・・。」
「そんなんじゃ・・・!」
「もう。わかったよ!で悩みって、?」
光は何か言いたげそうに笑ったが何も言わずに話し出した。
「誰にも、言わねえよな?」
え――?
「も、もちろん!当たり前でしょお!?」
「理央や・・・。花音にもだぞ?」
え。カノちゃんはともかく。親友の理央にも?
それを、アタシだけに?
どんな深刻な悩み――?
「うん。約束する。」
(この一言を後々アタシは後悔することになる・・・。)
「じゃあ。約束な・・・。」
「う・・・ん。」
「俺のキャラじゃねえけど。恋愛関係??」
「えー?恋愛にキャラとか、関係ないデショ。」
「www咲来ならそう言ってくれる気がしてたんだ。」
「それは、どうも。」
こんなにも光がアタシを信用してくれていたのは以外だった。
「で、その好きなヤツっていうのが――。」
- ドキッ! -
「花音。」
「!」
言葉も出ない・・・。
なんで。このタイミングで・・・。
最悪。
「ビックリした?」
光は恥ずかしそうに笑う。
「・・・うん。そりゃあ。」
ビックリなんてどころではない。困る。
このまま、夏パを迎えたら・・・。
カノちゃんは理央に迫るだろう。
光はカノちゃんを見てなにか思うことがあるはず・・・。
それで、最悪、理央と喧嘩なんてされたら・・・。
考えたくもない。
今の状況を何とかするには、時間がかかる。
あと、4日で何とかするなんて無謀に等しい。
「花音のこと。小3のトキから、ずっとなんだ・・・。」
「!!」
アタシは涙がこぼれそうだった。
光はカノちゃんが理央を好きなことを知らないのだ・・・。
光を応援したい気持ちはやまやまなのだが。
カノちゃんと光を同時に応援なんて。無理じゃない!
「オレ。本気だぜ?」
「わ、わかってるって!」
アタシには・・・。
「頑張ってね。」
これしか言えなかった。
「うん。」
光は遠い目をする・・・。
アタシはこの日。笑わない光を初めて見た。