ブラッドサースティ・キラー
 誰かが殺されるという事実を、指をくわえて見ていることしか出来ないのだろうか。

 そんなことはしたくない。

 したくないけれど……。

 驚くほどに、僕は無力だ。

 誰がいつ殺されるのか分からないのに、どうこうして助けようなんて……出来るわけがない。

 そもそも、殺人鬼なる人物は本当に病院内で殺人を犯すのかも分からない。

 断定のしようがないのに、今、殺されるかもしれないだの嘘かもしれないだの考えていたって、しょうがないこと……なのかもしれない。

 ……僕は、何もないだろうってこうやって自分に言い聞かせて、怖いことから目を背けたいだけなのかもしれない、な……。

 ほら。この時点で僕は弱い。弱くて、無力であることを無意識のうちに主張してしまっている。

 まあ、実際、これは本当のことだから他に何も言わないけれど。
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