フェアリーカンタービレ
夜で暗くて、しかも侵入者。


賊と間違えられるのも、言うこと無しだった。



ミカドとかいう人も馬車の中に入ってきた。


妖精だ。


彼は、驚いている。


「うわ。俺に任せろ!ラミアス。」




ミカドは自分の手のひらを黄色く輝かしている。




!!!




雷魔法だわ。






アニアは気づいた。




そして、シンシアを小突いた。





シンシアは、はっとして少しピンク色で透明らしい色を手のひらに輝かして、最低限のバリアを張った。




ミカドの雷は一直線にシンシアとアニアに向かい、シンシアのバリアに当たり、消えた。







アニアはその間にバックの中のマッチとろうそくをだし、火をつけた。





ボッという音ともに馬車は急に明るくなった。




ラミアスは目の前に立っているのが少女だと気付き、黄色い髪で黄色い瞳を見開いているミカドを制した。




ミカドとシンシアは、光を消し、向き合った。



アニアはラミアスに説明をした。




「申し訳ありません。急に馬車内に侵入してしまい……。私達は今、あなたたちが走っていた方向へ向かっておりまして、丁度良い具合に通りかかったので途中まで乗せてもらおうと……。」



ラミアスは感心したように言う。


「それは、すごいな。この馬車は猛スピードで走っていたのに。」



まだ、心からアニアを信用していない。



今度はミカドが口を開いた。



「あんた、見たことがないな。どこの妖精だ。」



通常、妖精の情報網はものすごく、全員が全員の容姿を名前を知っているのだ。



鍵になっているものを除いて。




シンシアは、わからないというふうに首をかしげた。




ヤバい。




もうばれたよ。




アニア~!



アニアは必死に頭をめぐらした。


どうすれば、疑われずにうまくやってけるのだろう。



そうだわ。




確か……。





「彼女、情報に疎いのよ。」




アニアはさらりと言った。



横目でちらりとシンシアを盗み見る。



シンシアは、苦笑いを浮かべている。




「はあ?妖精は普通、情報を絶えずに入手してるだろ?」




ミカドは目を細めて言った。



「普通はね。でも、山奥の村のことは知ってる?」



アニアはさらに続ける。



ミカドは目を反らして少し考え込んでいる。



「彼女は、その山奥の村に住んでいるのよ。山奥の民は情報に疎いでしょ?」



アニアの言葉にミカドは納得するしかなかった。



シンシアもさすがに山奥の村のことは知ってるらしく、ニコニコしている。



内心では、私はれっきとした帝都生まれなんだから!!!と主張しているのだが。



「私は、シンシア。彼女はアニア。彼女がなくした鍵を探して旅をしているの。」



シンシアの自己紹介でアニアはにっこり笑った。




ラミアスは一瞬、ドキッとした。




おかしいな……。




いつも、たくさんの女の子達と出会うが彼女は特別な感じがする……。




実際にラミアスが町を歩くとたくさんの女性が集まってくる。





それも、みんな顔が見事に赤いのだ。




ラミアスは自覚していた。




自分がモテていることを。




今まで、会ってきた女性がみんな自分に惚れることを。





けれど、アニアは違った。




まるで、ラミアスを見ていないのだ。





アニアことテルミトラは異性のことをきちんと見たことはなかった。




多くの人が愛の言葉を捧げても、プレゼントを渡しても。





彼女はただただ微笑むだけだった。



私は、恋などしてはいけないように……。




アニアはラミアスを見て言った。




「あなたたちはラミアスとミカドね?」




いきなりの質問に反応できなかったラミアスに変わり、ミカドが答えた。


「ああ。そうだ。」








アニアは質問を続ける。





「ねえ、この馬車はどこに向かっているの?」







「俺たちの目的は果たされた。君たちの行きたいところ、どこでも連れていくよ。」





いつの間にか、答えてしまっていた。





心の中で驚きながらも、自分を褒め称えている自分がいる。



一旦ミカドを見ると、ミカドは驚きの顔で俺を見て言う。




「……。まあ、別に良いけど。」




アニアは顔を輝かせてラミアスを見る。



「ありがとう!!!」




満円の笑みでラミアスの手を握る。





手を握られたラミアスは顔を赤くして、微笑んだ。





ミカドはニヤリと笑う。




シンシアは、それを見て首を傾げたが、ミカドに行き先を告げた。





ミカドはしばらく考えるようにしてから、コクリと頷き、馬車を走らせた。












しばらくして、ひとつ目の村に着いた。










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