フェアリーカンタービレ
アニアは馬車内でバックをいじっていた。
ほぼ、手ぶらとは言ったものの、シンシアにも秘密にしていたことがある。
それは、バックの中身を確認していないことだった。
アニアはバックを逆さにし、荷物を全て取り出した。
入っていたのは、傷を治す飲み物、思ったことを何でも書いてくれるノート、知りたい情報を一瞬で教えてくれる本(だが、妖精の知識に限る)、何でもしのぐマント、悪魔が嫌がる魔方陣(嫌がらせレベル)、10日分の食料、そして、妖精界と連絡を取り合うための番号。
アニアはそれらを出して悩んだ。
金が.……。
ない。
それに、あれも…ない。
「……。こうなったら、ナーシャに頼むしかないようね。」
あまり頼みたくないんだが……。
どうせ説教が始まる。
説教のことは頭の奥においといて、アニアは早速妖精界と通信を取れるように番号の紙を手に握った。
そして、空中に番号を書き出す。
馬車内は少し明るくなった。
アニアは光の中に扉が見えると、扉に向かって言った。
「1158、ナーシャ。」
すると扉は開き、ナーシャがいた。