フェアリーカンタービレ
「シンシア。」
いきなりの静かなアニアの声にシンシアは驚いてラミアスの腕にしがみついた。
「はい!」
そしていきなり顔を赤くした。
私、今……。
ラミアスの腕に……。
ラミアスはシンシアに赤い顔で見つめられため息をついた。
シンシア。
なんだ?その赤い顔は。
俺に何かを求めているのか?
ふと、頭に浮かぶのは横にいるアニアのことだ。
ラミアスは気づいたら自分の顔が赤くなっているので、恥ずかしくなり、さらに赤くなった。
アニアはシンシアがラミアスにしがみついて立ち上がっていないのを見ると(しかも、お互いに赤い顔で見つめあっている)、ミカドをつついた。
ミカドは意識を二人に持っていっていたので、
急にアニアに肩を叩かれてビックリし飛び上がった。
声を出そうとした瞬間に口をアニアに塞がれた。
「しっ。あの恋人みたいな二人はほっといて、扉を開けてしまいましょう。」
ミカドはフッと笑い、小声で言った。
「あんたは何にもわかっちゃいないよ。あの二人は恋人でも両思いでもないよ。」
「そう……。じゃあ、それでもほっておきましょう。扉を開けるわ。」
興味なさげにアニアは二人から視線を外した。
ミカドはため息をついてもう一度二人に視線を合わせる。
まあ、一見恋人には見えるわな。
二人は時が止まっているように見つめあったままである。