花嫁指南学校
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実は幸恵が田舎に帰ってから五年後にこんなことがあった。
その頃の幸恵は越仁会での秘書業務にも慣れ、地元に戻ってきた時よりも安定した生活を送れるようになっていた。実家にも生活費を入れられるようになり、そのお陰で弟妹たちは上の学校へ進学することができた。かつては厄介者だった彼女はすっかり一家の大黒柱として家人から頼りにされていた。
そんな折、東京から一人の青年が幸恵の家を訪れた。それは彼女がカメリア女学園の学生だった時に交際していた少年で、彼女の娘の父親だった。その日は休日だったので幸恵も在宅していた。久しぶりに見る恋人は高校生の時よりやつれて見え、彼もそれなりに苦労をしてきたことがうかがい知れた。