花嫁指南学校

「高校ぐらいは出ておかないといけないと思いませんか」

「いいえ。だってあたしはもうやりたいことを決めてしまったんですから。それにあたし、もう十六ですからアイドルとしてスタートするには遅いくらいです」

 理香の返答を聞いて、佐島は深いため息をつく。

「お母様はそのことについてどう思っていらっしゃるの? あなたの考えに賛成していらっしゃるかしら?」

 佐島にたずねられ、理香は口ごもる。そこが問題だった。理香の母親はあの世界をよく知っているだけに娘がそこに飛び込むことに反対している。

「ええ、母も私の考えに賛成してくれました」

 理香は平気な顔をして嘘をついた。

「まあ、そうなの? あの世界はとても厳しい世界だと聞いていますよ」

「はい、わかっています」

 理香は佐島の目をまっすぐ見ている。


 カメリア女学園の創設以来、芸能界に入りたいなどという生徒が現れたのは初めてのことである。いくら容姿の良い娘とはいえ、ほんの一時売れるかどうかもわからない世界に身を投じるよりも、裕福な男性と結婚する方が安全牌であることを保護者も生徒もよくわかっている。

 やはり学園始まって以来のはみ出し者、吉葉理香である。ただ者ではない。 
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