花嫁指南学校
「だからさぁ。あたしはね、びっくりしたのよぉ。この日本にねぇ、きれいなお姉ちゃんばかりを集めた花嫁学校があるんだってさ。カトレア女学園とかいう私立の学校よ。しかもそこの学生は皆処女なの! 信じられる? 水揚げされる前の芸者じゃあるまいし、今時そういうのを売りにしているのよぉ。まったくなんちゅー学校なのよ」

 それは奥村優二にふられ、谷野菫に彼を奪われた直後の杉田志穂美だった。どうも彼女と来宮は同じ界隈で飲んでいるようだ。

「へえ、世の中にはそんな特殊な学校があるんですね」
 マスターが常連の女性客に相槌を打つ。

「特殊も何もいかがわしいわよ! マスター、あたしはそこの女子大生に男を取られたのよぉ。あたしみたいなアラサーよりも若い処女の方がいいんだってさぁ。男ってホント、勝手な生き物よねぇ」

 女性客の体が左右に大きく揺れる。隣でその会話を聞いていた来宮と恵梨沙は互いに目を合わせる。

「杉田さん、大丈夫ですか」

「うぃー。だいたい、若い女を売り物のように仕立てて金満オヤジに売り込むなんて、ヒューマニズムに反しているわよ! それが教育者のすることか! それに娘をあんな所に預けるなんて親は一体何を考えているのかしら? 娘を芸者の置屋に売るようなものよ! あそこの女子大生の親の顔を見てみたいもんだわ!」
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