花嫁指南学校
「そうですか。あなたの出身地にはそのような奨学制度があるのですね。ですが、あなたが在籍する本学は家政学と語学を中心にしたカリキュラムを組んでいますので、医療専門学校への入試に必要な高度な理科系教科を教えていません。それに、運良く経済団体があなたを支援するようになったとしても、私立大学の医療専門学校の高い学費までは面倒を見てくれないでしょう。そうなるとあなたは国公立の医療専門学校を狙わなければなりません。そのような専門教育機関に入学するには、志願者は高校の普通科で受験勉強をしなければなりません。あなたは本学で家政学を中心に学んできましたし、年齢ももう二十歳を過ぎています。あなたがいくら優秀な学生だといっても、医療専門学校を目指すという点では非常に不利な状況にあると言わざるをえません。私はそれを心配しているのです。実現困難な途方もない夢を追ってしまったがために、良縁を得るという好機を逸してしまうのではないかと。まして来宮医師は若くて見所のある男性だとお見受けしていますから、彼のような素晴らしい方を逃すのは惜しいことです。桐原さん。本学はマスコミや文化人たちから『時代に逆行している』と批判されますが、女の幸せを追求することはいつの時代でも女にとって大切なことだと私は考えております。それは決して時代遅れの考えではありません」
佐島学長の言葉は厳しさの中に温かさを感じるものだった。
佐島学長の言葉は厳しさの中に温かさを感じるものだった。