花嫁指南学校
「学長先生のおっしゃることはごもっともです。私自身も自分が無謀な挑戦をしようとしていることを自覚しています。学園の歴史上、誰一人として本校以外の学校での教育を志望する学生はいませんでした。それだけ、学生たちは皆自分の分をわきまえていたのです。身の程知らずの私は、自分の学力もわきまえずに高望みをしております。これが厚かましい願いであることは百も承知です。このことで先生方に大変心配をおかけして申し訳なく思っています。ですが、もし今自分の希望に向かって踏み出さなかったら、歳をとった時に後悔するでしょう。学問は若い時にしか修められないことですが、先生が言及された『女の幸せ』はもう少し後でも追及することができると思うのですよ。先生が指摘された学力の点ですが、これは独学でアップさせようと考えております。専攻科も含めると、私はあと一年半しかこの学園にいられませんから、それまでに専門学校に合格するつもりです。専攻科を修了するまでに合格することができなかったら、受験はそれで終わりにします。その時は潔く本学の勧める道に進みたいと思います。ですから、学長先生。どうか私に医療専門学校を受験するチャンスをお与えください。私の一生のお願いです」

 恵梨沙はありったけの熱意を込めて話した。目の前で能面のような表情を作っている女教師が何を考えているのかはわからない。

 学長の説得はまだ続くことを恵梨沙は覚悟していた。
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