花嫁指南学校
6
夕闇迫る丘の上の公園に、一台のコンパクトカーが停まった。来宮医師と恵梨沙はカメリア女学園の近くにある公園で待ち合わせをしていた。
「お忙しいところ、お呼び立てしてすみません」
恵梨沙は車から出てきた来宮に話し掛ける。
「いいえ。僕の方こそ桐原さんから話を聞きたかったです。進路担当の先生から聞きましたが、あなたが縁談を断りたいという話は本当ですか」
夕日に照らされた来宮の顔には悲壮な表情を浮かんでいる。
「はい。それは本当です」
「そうですか。それは残念です。ここしばらくあなたは僕の誘いにのってくれましたから、てっきり僕のことを気に入ってくれたのかと思っていたんですが。どういう心境の変化が起こったのか教えてくれませんか」
「来宮さん。これをあなたにはっきり伝えたかったんですけど、私は何もあなたが気に食わなくなったからあのお話を断ったのでありません。あなたは良い人だと思っています。それ以上にあなたは私の世界に新しい風を吹き込んでくれた人です。あなたのお仕事の話を聞くにつけ、世の中にはそれほどまでに尊い使命があるのかと感心しておりました。こうして私はあなたが従事していらっしゃるような職業、つまり理学療法士になることを志望するようになったのです」
「お忙しいところ、お呼び立てしてすみません」
恵梨沙は車から出てきた来宮に話し掛ける。
「いいえ。僕の方こそ桐原さんから話を聞きたかったです。進路担当の先生から聞きましたが、あなたが縁談を断りたいという話は本当ですか」
夕日に照らされた来宮の顔には悲壮な表情を浮かんでいる。
「はい。それは本当です」
「そうですか。それは残念です。ここしばらくあなたは僕の誘いにのってくれましたから、てっきり僕のことを気に入ってくれたのかと思っていたんですが。どういう心境の変化が起こったのか教えてくれませんか」
「来宮さん。これをあなたにはっきり伝えたかったんですけど、私は何もあなたが気に食わなくなったからあのお話を断ったのでありません。あなたは良い人だと思っています。それ以上にあなたは私の世界に新しい風を吹き込んでくれた人です。あなたのお仕事の話を聞くにつけ、世の中にはそれほどまでに尊い使命があるのかと感心しておりました。こうして私はあなたが従事していらっしゃるような職業、つまり理学療法士になることを志望するようになったのです」