花嫁指南学校
 恵梨沙の話を聞いて来宮しばらく何かを考えていた。それからゆっくりとその口を開いた。

「桐原さん。あなたの決意を聞かせてくれてありがとう。あなたが考えていることがわかって本当に良かったです。そこまで固い決意を持っているのなら、僕はあなたの意思を尊重するより他ありません。あなたの夢を心から応援します。桐原さん。それでも僕は遠くに羽ばたこうとしているあなたを手放すのが惜しいのですよ」

「来宮さん……」

「あなたが医学を修めて独り立ちするのは数年先だと思いますが、僕はあなたを待っていてもいいですか。あなたが故郷の町に戻るのなら僕も連れていってはくれませんか。医師不足の村なら僕のような未熟者でも必要としてくれるかもしれません。どうか、考えてみてくれませんか」

 恵梨沙は来宮の顔を見上げる。彼女は思わず彼の首に自分の腕を巻き付けた。学園の教師が常々口を酸っぱくして説いているマナーなどかなぐり捨てて、彼女は彼の首にしがみついていた。

 そうこうしている内に陽がすっかり傾いていたことに二人は気が付かなかった。
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