花嫁指南学校
ナズナは短大二年の時にどこも行き先が決まらず、専攻科に残ったくちである。あと一年足らずの在籍期間内に良い結婚相手が見つかればベストなのだが、それも難しそうなので就職活動にも力を入れている。とはいっても、企業がカメリア女学園に求めている人材は職場の花であり社員の結婚相手なので、見栄えのよろしくないナズナが彼らの御めがねに適うことはなかった。
子どもの頃可愛かった子が大人になって平凡あるいはそれ以下の顔立ちになってしまうことがままある。小学校の同窓会に出た人が、久々に会うクラスのマドンナの劣化を見てショックを受けることがあるが、同様の現象がナズナの外見にも起こった。小学生時代の彼女は美少女というほどでもなかったが、近所でも評判の可愛らしい女の子だった。素直で従順な少女でもあったので、その資質を見抜かれてカメリアの中等部に入ることができた。
それから九年が経過した今、彼女の体型は著しく変化してしまい、身長百五十五センチにして体重は六十キロの大台に乗ってしまった。肥満のせいで顔のメリハリもなくなり、重量級の柔道選手のような顔立ちになってしまった。椿の花園に混じる雑草とはまさにナズナのことである。
もちろん、ナズナとて自分が在籍する学園の目標をよく理解している。彼女は暇を見つけては学校付属のジムに通い、栄養士の資格を持つ寮のスタッフの指示に従って食事制限も行っていた(カメリア女学園には年頃の娘をより美しくするための施設やスタッフが充実している)。だが彼女の体重は一向に減らなかった。ナズナの母親もぽっちゃりとした体型だから、ナズナも大人になって太る体質なのだろう。もともとのん気な性格だったのでダイエットは長続きせず、その後はますます食欲が増進した。自室でスナック菓子をつまんでいると、ルームメイトの菫が白い目でナズナを見る。