花嫁指南学校
 菫のような嫌味な女を引き合いに出されるなんて不本意だったが、ナズナには返す言葉がなかった。

「過去において進路が決まらなかったのは、重篤な病気にかかったり障害を負ったりした気の毒な学生だけです。あの子たちに罪はありませんでしたから、本学もできるだけのことをして故郷に帰してあげました。でも、あなたは明らかに努力不足でしょう! このままでは行き先も決まらないまま厳しい世の中に放り出されてしまいますよ」

「はい。先生のおっしゃるとおりです」

 ナズナはうなだれる。故郷に帰るといっても、実家では子だくさんの両親が四人の弟妹を抱えて生活にあえいでいる。そんな所に手ぶらで戻っても、出戻り娘のように邪魔者扱いされるだけだ。両親は娘が玉の輿に乗って実家を援助してくれることを願っているが、当の娘はそんな期待には応えられるような孝行者ではない。娘が進路の決まらない八方塞の状態にあるとは、両親は夢にも思っていない。

「今後はもっともっと真剣に自分の生活を見直すことですね」

 教師の厳しい一言でナズナの面談は終わった。
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