花嫁指南学校
相手は先にレストランに到着していた。彼は油っぽいポマード頭を撫でつけた風采の上がらない中年男である。ナズナは「お待たせしました。本橋です」言い、楚々と着席した。
「君、テーブルが間違ってるんじゃないの? 僕はカメリア女学園の学生さんと待ち合わせをしているんだけど」
ナズナが正面に座るなり見合い相手がたずねてくる。
「いえ、間違いではありません。私がお話をお受けしましたカメリアの学生です」
「え! 君がお見合いのお相手なの?」
男は絶句する。
「はい……」
ナズナには相手の考えていることが手に取るようにわかり、気まずい思いがした。
「ホームページの写真とずいぶん違うなぁ。もう一度名前を言ってみてよ」
「本橋ナズナです」
ナズナが名乗ると男が怪訝な顔をする。
「あれ。確か僕が紹介をお願いした人は橋本夏香さんという人だったんだけどなぁ。さては君の学校は人違いをしたんだねえ。橋本さんとは全然違う子が来ちゃったじゃないか。写真で見た子はアイドルみたいな子だったよ」
「学校が名前を聞き間違えたのでしょう。どうもすみませんでした」
ナズナは頭を下げる。
「困るなぁ。僕、今日のためにわざわざ時間を作って地方から出てきたんだよぉ。人違いでしたじゃすまされないよ。おまけに人違いといえこんな関取みたいな子を送ってくるなんてさぁ、あんまりじゃないか。こっちは高い金払ってお宅のクラブの会員になってんだよぉ」
「すみません」
自分の落ち度ではないのにナズナは何度も頭を下げた。
「それにしても君、本当にカメリア女学園の学生なの? 確かあの学校って可愛くないと入れないって聞いたけど、何で君みたいな変な子が入れたわけ? プッ、そのお多福みたいな顔ときたら! お多福だから着物姿なの? ヒーッ!」
男は肩を揺らしながら笑い始める。彼は両手で腹を押さえテーブルをトントン叩く。さすがのナズナもかちんときたがその気持ちを表に出すことはできない。どうにかその場を取り繕おうと懸命に対応する。
「今、学校に電話をしてどうすればいいか訊いてみますから」
男は笑い転げていてナズナの言葉など聞いてはいなかった。彼は椅子から転げ落ちてやっと我に返った。
「君、テーブルが間違ってるんじゃないの? 僕はカメリア女学園の学生さんと待ち合わせをしているんだけど」
ナズナが正面に座るなり見合い相手がたずねてくる。
「いえ、間違いではありません。私がお話をお受けしましたカメリアの学生です」
「え! 君がお見合いのお相手なの?」
男は絶句する。
「はい……」
ナズナには相手の考えていることが手に取るようにわかり、気まずい思いがした。
「ホームページの写真とずいぶん違うなぁ。もう一度名前を言ってみてよ」
「本橋ナズナです」
ナズナが名乗ると男が怪訝な顔をする。
「あれ。確か僕が紹介をお願いした人は橋本夏香さんという人だったんだけどなぁ。さては君の学校は人違いをしたんだねえ。橋本さんとは全然違う子が来ちゃったじゃないか。写真で見た子はアイドルみたいな子だったよ」
「学校が名前を聞き間違えたのでしょう。どうもすみませんでした」
ナズナは頭を下げる。
「困るなぁ。僕、今日のためにわざわざ時間を作って地方から出てきたんだよぉ。人違いでしたじゃすまされないよ。おまけに人違いといえこんな関取みたいな子を送ってくるなんてさぁ、あんまりじゃないか。こっちは高い金払ってお宅のクラブの会員になってんだよぉ」
「すみません」
自分の落ち度ではないのにナズナは何度も頭を下げた。
「それにしても君、本当にカメリア女学園の学生なの? 確かあの学校って可愛くないと入れないって聞いたけど、何で君みたいな変な子が入れたわけ? プッ、そのお多福みたいな顔ときたら! お多福だから着物姿なの? ヒーッ!」
男は肩を揺らしながら笑い始める。彼は両手で腹を押さえテーブルをトントン叩く。さすがのナズナもかちんときたがその気持ちを表に出すことはできない。どうにかその場を取り繕おうと懸命に対応する。
「今、学校に電話をしてどうすればいいか訊いてみますから」
男は笑い転げていてナズナの言葉など聞いてはいなかった。彼は椅子から転げ落ちてやっと我に返った。