花嫁指南学校
会場に漂う独特の雰囲気に飲まれ、少し気後れした優二はトイレに入った。トイレから出てきた彼が手を拭き拭き歩いていると、廊下で壁の花になっている女子学生を見つけた。
通りすがりに彼女を見ると、彼女は自分に向かって微笑んだ。
その時、優二の思考が止まった。女子学生はすみれ色のシフォンワンピースを身にまとい、細い身体を壁にくっ付けていた。背後にあるのは大理石の壁であるはずなのに、彼女の背中からは後光が差していた。彼はこれまでこんなにも可憐な女性を見たことがなかった。あたかも、山の谷間で一輪の百合の花がそよいでいるかのような風情だ。
優二は何も言えないまま廊下を横切り、ホールに戻った。遠くの一画では友人が彼より十センチは身長が高そうな女性と歓談している。優二にはあの積極性が羨ましかった。いくら出会いを目的としたお見合いパーティーとはいえ、初対面の、しかも結構年下の女の子にどう話し掛けたらいいのかわからない。自分の知る世界にいる女たち、例えば恋人の志穂美のような世俗的な現代女性なんかとは全然違うタイプの異性である。
優二は彼女に声を掛けることができなかった。思い切ってさっきの廊下にもう一度出てみると、あの女の子の姿はもうそこにはなかった。彼は広いホールを早足で歩きながら、彼女の姿を探し求めた。シフォンワンピースをまとった色白の娘を追いかけて、彼はパーティー会場の隅々を回った。すでにどこかの金満オヤジが彼女に声を掛けていたらどうしようかと焦った。あんなに可愛い女の子を男たちが放っておくはずがない。だが、彼は彼女を見失ってしまった。
通りすがりに彼女を見ると、彼女は自分に向かって微笑んだ。
その時、優二の思考が止まった。女子学生はすみれ色のシフォンワンピースを身にまとい、細い身体を壁にくっ付けていた。背後にあるのは大理石の壁であるはずなのに、彼女の背中からは後光が差していた。彼はこれまでこんなにも可憐な女性を見たことがなかった。あたかも、山の谷間で一輪の百合の花がそよいでいるかのような風情だ。
優二は何も言えないまま廊下を横切り、ホールに戻った。遠くの一画では友人が彼より十センチは身長が高そうな女性と歓談している。優二にはあの積極性が羨ましかった。いくら出会いを目的としたお見合いパーティーとはいえ、初対面の、しかも結構年下の女の子にどう話し掛けたらいいのかわからない。自分の知る世界にいる女たち、例えば恋人の志穂美のような世俗的な現代女性なんかとは全然違うタイプの異性である。
優二は彼女に声を掛けることができなかった。思い切ってさっきの廊下にもう一度出てみると、あの女の子の姿はもうそこにはなかった。彼は広いホールを早足で歩きながら、彼女の姿を探し求めた。シフォンワンピースをまとった色白の娘を追いかけて、彼はパーティー会場の隅々を回った。すでにどこかの金満オヤジが彼女に声を掛けていたらどうしようかと焦った。あんなに可愛い女の子を男たちが放っておくはずがない。だが、彼は彼女を見失ってしまった。