花嫁指南学校
「陶子。私に言いにくいことを話してくれてありがとう。ねえ、最後に一つだけ訊いてもいい? あなたはどうやって同じ嗜好を持つ男の人と知り合うことができたの? まさか自己紹介書に自分の嗜好を正直に書いたわけではないでしょう」
恵梨沙がたずねた。
「まさか。清楚な花嫁候補がそんなスキャンダラスなことなんて書けないわよ。私はね、自分のプロフィールを通して同類にだけわかるシグナルを送ったのよ」
「シグナル?」
「ええ。私、カメリア倶楽部のホームページ用の写真を撮る時、虹の模様がプリントされたワンピースを着たの。そしてその写真の下に『このワンピースのデザインは私の趣味です』というコメントを入れたのよ。レインボーカラーは同性愛者の象徴なのよ。海外のそういうフェスティバルでも虹色の衣装を着た人たちが会場を練り歩いているわ。ホームページを見た松若さんが私に連絡を入れてくれた時、開口一番あのワンピースが気に入ったと言ったのよ。自分も全く同じセンスを持っているとね」
「へえ」
恵梨沙が感心する。
「あなたの方が私なんかよりもずっと頭が良いわ」
ルームメイトの賛辞に陶子は控えめな笑みを浮かべる。