花嫁指南学校
「それ以上何もおっしゃらないでください」
佐島学長が少しだけ声の調子を強める。
「余計な心配はなさらなくて結構です。奥様。私どもカメリア女学園は結婚を希望される男性の様々なニーズに応えるべく、様々なタイプの学生を在籍させているのです。沓掛さんはまさに若旦那様にぴったり合う人で、一緒になったら二人は必ず幸せになります。それはこの私、佐島が自信を持って保証致します」
「でもあの子は」
客人の言葉はまたも佐島に遮られた。
「奥様。私はこの仕事に就いてから、これまで多くの縁を取り持ってまいりました。これでも人を見る目は養ってきたつもりです。長年の経験から、私にはどの男性がどの学生と相性が合うのかわかります。うちの大切な学生には幸せな結婚をしてほしいと私たちは常に願っています。若旦那様になら沓掛さんをお任せできると思い、縁談を勧めさせていただいたのですよ。どうか私を信じてください」
佐島はその大きな顔に笑みを浮かべ、強い口調で言い切った。
「わかりました」
松若夫人は佐島の顔を見る。
「先生がそこまで言われるのでしたら、私はあなたを信じてみようと思います。私の願いは息子の幸せなのです。佐島先生ほどの方が保証してくださるのなら彼の未来は明るいでしょう」
夫人は涙腺が緩みそうになるのをこらえながら、再び学長に頭を下げた。