物語と人形
少しして、少女が台所から出てきた。
「あぁ!」
エリーザは少女に紹介しようというように声を発した。
イザヴェルは少女を見る。
少女の灰色の瞳が大きく揺らいだ。
「……イブ。」
名前を呼ぶと、イザヴェルに駆け寄った。
「貴様……メルか。」
疑いの視線を向けるも、認識して言った。
少女は泣きそうな表情をして、イザヴェルを見上げる。
「ごめん、なさい……」
そっと、裾を握って、言った。
「わたし……わたし…………わすれ、なきゃって……だって、あなたは、いっしょにいちゃいけないから。もう、あえないって……」
「あぁ。」
イザヴェルは少女に目線を合わせた。
どこか優しげな目をするイザヴェルと泣きそうなのを堪える表情の少女。
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