物語と人形
屋敷で手当てを終えた女性は疲れていたのか、眠っている。
羽根が折れている為、畳むことが出来ないので、羽根を板と包帯で固定して、女性の身を横にした。
「どうやら、異形の仕業らしいな。」
あの時、辺りに異形が居なかったことから、仕留めたのだろう。
ハルデンは少女に女性を任せて、本を読み始めた。
少女は女性を看病している。
少しすると、女性が目を覚ました。
「……ここ、は」
言葉を言った後、起き上がり、痛みに呻いた。
「動かないほうがいい。」
ハルデンは本に目を向けたままで言う。
「此処はわしの屋敷。わしはハルデン・クシュトーク。人間の魔女族だ。其処に居るのが人形……この家の召使いだ。」
「人形?」
女性は少女を見た。
少女はぺこりと無表情のままで一礼をする。
「私はエリーザ・アルベルタ。種族は神族の天使族……です。」
エリーザは不慣れな様子で敬語を使う。
「やはりな。」
羽根を見遣って、ハルデンは頷く。
「気遣う必要は無い。」
「心遣いありがとうございます。」
エリーザは一礼した。
「今日は其処で良ければ休んで行けばいい。気が向いたら何処へなりとも帰れ。」
そう言うと、背を向けた。
「良いの、ですか?」
「気遣うなと言った筈。」
「……良い、の?」
ハルデンはちらとエリーザを見た。
「何がだ?気遣いの件か。」
「それもだけど……見ず知らずの他人をこんなふうに野放しにしていいの?もしも、私が強盗だとしたら」
「愚問。」
エリーザの案じることをはっきりと切り捨てる。
「此処に盗む物も大してない。それに、わしを殺しても何もならない。老いぼれが死んで、利益があると?第一に、其処に人形が居る。何も案ずる必要がない。」
そう言い放ち、部屋に行った。
エリーザはぽかんとした表情になった。
< 5 / 13 >

この作品をシェア

pagetop