物語と人形
翌朝、少女は早くから朝食や洗濯といったことを済ませて、井戸へ向かった。
「私も行く。」
エリーザが桶をひょいと持ち上げて言った。
今、起きた様子で目をしぱしぱと瞬かせている。
少女は嫌々と首を振った。
そして、桶に手を伸ばす。
「私も此処の召使い。このくらいは、出来る。」
そう言われた少女は頷くしかなかった。
そして、井戸に向かう。
「おまえ、口は聞けるの?」
エリーザに尋ねられてこくっと頷いた。
「……でも、喋ったとこ、見たことない。」
少女は相も変わらぬ無表情で首傾げる。
「今だって。」
井戸から水を汲んで、エリーザは少女を見た。
「……」
少女は何か考えるような仕草をした。
「おしゃべりなひと……ふしぎ、なひと。」
エリーザの目を見てぽつりぽつりと呟くように言う。
「何だ。ちゃんと話せるじゃない。」
「……なれて、ない。おこられる。」
少女はたどたどしい言葉で答えた。
「怒りはしない。むしろ、言葉にしなければ伝わらないこともある。」
エリーザは桶を持って屋敷へ向かった。
「いい?ひとが一番怒るときは、相手の意思が解らない時だ。理解しようとしているのに、相手が無視してるのだと感じた時だ。寂しくて、虚しくて。そのごちゃごちゃをどこかへぶつけたくなる。」
「あなたは、おこってる?」
少女はおずおずと問う。
「おばかさん。そんなわけ無いでしょ。」
エリーザは悪戯っぽく笑った。
「あの…………あ……」
少女の声はそこで途切れた。
「私も行く。」
エリーザが桶をひょいと持ち上げて言った。
今、起きた様子で目をしぱしぱと瞬かせている。
少女は嫌々と首を振った。
そして、桶に手を伸ばす。
「私も此処の召使い。このくらいは、出来る。」
そう言われた少女は頷くしかなかった。
そして、井戸に向かう。
「おまえ、口は聞けるの?」
エリーザに尋ねられてこくっと頷いた。
「……でも、喋ったとこ、見たことない。」
少女は相も変わらぬ無表情で首傾げる。
「今だって。」
井戸から水を汲んで、エリーザは少女を見た。
「……」
少女は何か考えるような仕草をした。
「おしゃべりなひと……ふしぎ、なひと。」
エリーザの目を見てぽつりぽつりと呟くように言う。
「何だ。ちゃんと話せるじゃない。」
「……なれて、ない。おこられる。」
少女はたどたどしい言葉で答えた。
「怒りはしない。むしろ、言葉にしなければ伝わらないこともある。」
エリーザは桶を持って屋敷へ向かった。
「いい?ひとが一番怒るときは、相手の意思が解らない時だ。理解しようとしているのに、相手が無視してるのだと感じた時だ。寂しくて、虚しくて。そのごちゃごちゃをどこかへぶつけたくなる。」
「あなたは、おこってる?」
少女はおずおずと問う。
「おばかさん。そんなわけ無いでしょ。」
エリーザは悪戯っぽく笑った。
「あの…………あ……」
少女の声はそこで途切れた。