物語と人形
帰宅すると、ハルデンが炊事をしているのが見えた。
「あ……」
少女は慌てて、傍に寄る。
「いい。」
ハルデンは仏頂面で言った。
「もう、出来た。」
そう言うと、食事をテーブルに置く。
「ありがとう、ございます。」
少女が言うと、ハルデンは驚いたようにした。
(これは、あやつの力か……面白い。)
ハルデンは少し柔らかな表情をして、食事を始めた。
静かな時間が流れる。
誰も言葉を発しない。
しかし、不思議と穏やかだ。
「おごちそうさま。」
エリーザは食べ終わると、食器を片付けた。
「……おごちそう、さま。」
少女が食べ終わると、ハルデンも食べ終わった。
ハルデンと自分の食器を少女が片付ける。
台所には踏み台があり、洗い物も炊事も全て少女がしていたということを物語っている。
(私が来る前までは、ひとりで全部していたのか。すごいな。)
エリーザは洗い物をしながら思った。
自分よりも小柄で恐らくずっと幼い少女が全てしている。
エリーザは離れで暮らしていたとはいえ、身の回りのことは家政婦がしていたし、貴族なので贅沢三昧だった。
教養として、こういったことをする知識があってもしたことは殆どない。
家政婦が風邪をひいた時くらいなものだ。
料理をしたことはこの人生で数える程しかない。
お菓子作りだけは趣味でしている。
その程度だ。
「……偉いな。」
ちょこまかと動きながら、掃除をしている少女を見て呟いた。
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