キスから始まるセカンドラブ
ヤバイ、ヤバイ。これはかなりヤバイ。この人が目を覚ましたら私のほうが明らかに変質者だ。とはいえ見ず知らずの人が自分の家にいるなんておかしい。ましてや寝室で寝ているなんて。

智人さんから特別なことを聞いてもいない。今日は待ちに待った最高の一日になるはずだったのに智人さんもいない。どうすればいいんだろう。下手に起こしてもし刃物なんかを所持していたとしたら確実に刺される。

せっかくの同棲生活一日目に殺されるなんて考えたくない。ブルブルと首を振る。かと言ってこのまま寝かせておくのも気持ち悪い。そうだ、智人さんに電話すればいい。そう思ったのにこんなときに限って携帯はカバンの中。真っ先に寝室に飛び込んできたからカバンは隣のリビングに置きっ放し。

「仕方ない。取りに行くか」

ボソっと呟き立ち上がり、部屋を後にしようとベッドから離れようとした瞬間だった。バサっと布団を捲る音が響き、スッと伸びてきた長い手。一瞬の隙に私の手首は掴まれてそのままグッと腕を引かれた。


「えっ?」


そう言う間も待たず、ぶつかった唇。咄嗟のことで目を大きく見開いて頭が真っ白になった私をおかまいもせずそれはなかなか離れようとはしない。私のショートした思考回路がようやく元に戻った瞬間に彼の唇が離れた。
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