キスから始まるセカンドラブ
「おーい、聞いてんのか?」
目の前にチラつく大きな手。見えているし、聞こえているけれど納得いかない。理解不能。そもそも弟だということもさっきは信じたけれどそれすらも嘘かもしれない。危ない、危ない。
「その目は全く俺の言うことを信じてねぇってことだな?」
「し、信じられるわけないじゃないですか。いきなり寝室で寝ているし、弟とか言われても証拠すらない。それに、そ、それにいきなりキスする人なんて信じられません」
ダメだ。この人と話していても意味ない。急いで智人さんに連絡しなきゃ。いや、警察のほうがいいのかな。不法侵入だし、言ってることめちゃくちゃだし、それにキス。
「どうしたら信じる?ほら、よく見てみろよ。似てるだろ?俺と兄貴」
そう言って距離を詰めてくる彼。言われてみれば確かに似てるけど。鼻先がくっつくほど顔を寄せられて慌てて距離を取る。もうさっきからこの人近づきすぎ。
「兄貴、無期限の長期出張になったんだ。急遽。それであんたをここに1人で住ませるのが心配だからって俺にその間、ここに住んで欲しいって。悪いけど俺、アパート引き払ってきたからあんたが嫌がってもここに住むつもりだからそのつもりで」