不実な夜の向こう側
「君が手に入らないから、俺は代わりで欲を満たした。だけど本当は、ずっと君が、欲しかったんだ」

「……ッ、」

「馬鹿だよ、君は。こんな俺の家に、ひとりでのこのことやって来て」



ぎり、と、拘束された手首に、力がこもった。

見下ろしてくる、その熱い瞳から。目が、離せない。



「彼氏も、君がこういう目に合うんじゃないかと察して、引き留めようとしていたのに」

「……かれ、し?」



沖田の言葉に引っかかりを感じて、思わずみちるは聞き返した。

相変わらず近い距離で、そして少しだけ眉を寄せながら、彼は応える。



「──高津だよ。君たちは、付き合ってるんだろ?」

「えっ、つ、付き合ってません! ただの、同期です」

「そうかな。俺と同じような目で、あいつは君のことを見ていたと思うけど」

「……ッ、」



断定しているような声音でそう言った沖田に、ぐっと言葉を詰まらせる。

心の中で大切な同期に謝りながら、彼女は、小さく口を開いた。



「……付き合って欲しいと、言われたことはあります。でも、私はそれを断りました。今の、信頼できる同期という関係のままで、いたいと」

「……ふぅん……」



そうは言うものの、彼の不機嫌そうな表情も拘束も、緩むことはない。

みちるは、こくりと唾を飲み込んで。

また、目の前の彼を見上げた。
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