不実な夜の向こう側
「……みちる、と」

「ッえ、」

「そう呼んだんだ。ベッドで、彼女のことを」



もう、驚きの言葉も出なくて。ただ目を見開いて、彼のことを見上げた。

やはり彼は、口角を上げて。底意地の悪い笑みを浮かべながら、そんな彼女を見下ろす。



「もちろん、わざとだけど。参ったな、挿れたままで、ひっぱたいてくるから」

「な……あ、あなたって、人は……」

「だって、仕方ないだろう? あの女は少しだけ、君と声が似ていた。君を抱いている気分にさせてくれるくらいには、役に立ったよ」



にっこり。悪魔のようなことを話しながら、彼は綺麗な笑みを浮かべた。



「俺の、女を選ぶ基準は、いつだってひとつだ。君と、どこかが似ているかどうか」

「……ッ、」

「……すきだよ、みちる。君だけを、あいしてる」



耳元で、甘く囁かれて。

その響きに、身体中が震えた。


だって──……だって。

何度も何度も自分に言い聞かせて、押し込めた。

私は、こんな男すきじゃない。こんな男に、惚れたりなんかしてやらない。

こんな、不誠実な、男──。
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