不実な夜の向こう側
まあ、とにかく。

そんな言葉に上司から視線を外したみちるは、今度は自分の隣りにいる同僚へと目を向ける。

高津はビールジョッキを右手に持って、彼女へ笑いかけた。



「とりあえずまあ、今回はお疲れさん。鈴鹿だって、いっぱいフォローに回って疲れただろ」

「ふふ。フォローのフォローに走り回ってくれた高津くんも、お疲れさま」



お互いに笑い合いながら、カチン、とお酒の入ったグラスをぶつける。

本当に、今回の企画は社運を賭けていたと言っても過言ではない、とても大きなものだったのだ。

スケジュールの多忙さも、今までとは比べものにならなかった。

それでもこれを乗り切れたことで、またひとつ、社員として成長できたかと思える。



「……あ、また主任、一気した」

「………」



だけどとりあえず今は、人使いの荒い上司へ日頃の恨みとばかりに煽って酒を飲ませる、お調子者な同僚たちに喝を入れなければ。
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