天才博士の恋愛理論
「あ~…、やっと瑞穂をこの腕の中に抱けた…」
「やっとだなんて、大げさだな~…。今朝もこうやって抱き合ったでしょ?」
それから、お互いに家を出たのだから、それほど長い間触れ合うことができなかったというほどのものでもないはず。
「だって、学校じゃ用事がなければ、声をかけることさえもできないんだよ。それなのに―――…」
何を思い出したのか、彼の顔を見ると眉間に皺を寄せていた。
「あいつ! 堂々と、瑞穂のことを誘ってくれちゃってさ!」
そう言うと、私は腕を取られた。
そして、ゆっくりと私の手から腕へと彼の長く細い指が這っていく。
這わされた腕を掴みあげられると、そっと彼の唇が私の腕をなぞるようにして落ちていく。
「―――んっ…!」
その感触に、思わず目を瞑り声を出してしまった私。
「他には…、どこか触られてたりしてない?」
「ううん、大丈夫。それよりも棗くん。もう、ご飯の用意できてるよ」
「本当? じゃあ、すぐに着替えてくる」
奥の寝室へと入っていく俺の姿を見ながら、私はリビングへと戻った。