天才博士の恋愛理論
キッチンへと入り、ちょうど焼き終わってフライパンの上に乗ったままになっていた豚の生姜焼きを菜箸でつまむと、お皿の上に置いていく。
温めなおすために、お味噌汁の入っている鍋に火をかけ、小鉢にひじきの煮ものを入れていく。
それらを持って、テーブルの上に並べていると、部屋着に着替え終わった彼が入ってきた。
「うわ、いい匂い。帰ってきた時から思ってたけど、今日のメニューって生姜焼き?」
「正解」
「―――ねぇ、瑞穂。それって、もしかして今日のことで僕が怒ってると思ったから、僕の好きなものにしてくれたの?」
「うん……。だって、棗くん。あの時、何か言いたそうな目で私のことを見てたから」
「ああ、あれは、僕のやきもちと羨ましいな~…っていう気持ちだったんだけど」
やきもちと羨ましい気持ち?
とても、そんな目には見えなかった。
それに、それは雪乃だって気づいてたもの。
「それにしても、彼。3回生の確か吉田慶太(よしだけいた)だよね?」
まだ温め途中になっていたお味噌汁の火加減が気になって、キッチンに入っていた私の後ろを着いてきた棗くんは、食器棚からガラスコップを取り出し、冷蔵庫からお茶の入った容器を取り出してくれる。