天才博士の恋愛理論
「うん、そうだよ」
「接点って―――、あった?」
「う~ん…。接点というほどのものじゃないんだけど―――…」
温め終えたお味噌汁を器に入れながら、私は吉田先輩との出会いを思い出す。
「入学式の時にね、サークルに勧誘されたの。その時に、私は元々入るつもりはなかったんだけど、雪乃がどうしようかって迷ってて。一度だけ、付き添いという形で部室を覗きに行ったことがあるんだけど…。接点と言えば、その時ぐらいかな?」
「ふ~ん…。だけど、やけに彼、瑞穂にまとわりついてるよね? 今日だけじゃないでしょ?」
明らかに不機嫌という顔で、さっき取り出していたお茶の入った容器とコップを持って、キッチンから出ていく棗くん。
あれ?
確かに、吉田先輩には何度か校内でも声をかけられたり、誘われたりはしてるけど―――…
棗くんの前では、今日が初めてだったよね?
「ねぇ、棗くん。どうして、棗くんが知ってるの?」
よそったご飯とお味噌汁を持って、テーブルの上にそれぞれ置くと、すでに椅子に着いていた棗くんは、ぶすっとしたままで「部屋からも何度か見かけたから」とボソッと吐き捨てた。