天才博士の恋愛理論
思い返すと、そういえば何度か棗くんの部屋の近くで声をかけられたりしたな。
もしかしたら、その時に何度か見られてたのかも。
「大丈夫だよ。私、全部断ってるもん」
「知ってる。知ってるけど……」
それでも、何か納得ができないのか、棗くんは不機嫌な顔を崩そうとしない。
首を傾げて棗くんの顔を窺うと、棗くんは顔を上げて私のことをジッと見てきたかと思うと―――、
「瑞穂は僕のものなのに…」
と、とんでもなく恥ずかしいことを口に出した。
途端に、私の頬は赤く染まる。
うぅ~…。
アメリカ帰りだからか?
棗くんの愛情表現って、すごくストレートすぎて、生まれてからずっと日本で育ってきている私としては、棗くんとの付き合いはかれこれ3年ほど経つけど、未だになれないんだよね。
「ねぇ? 瑞穂は僕のものだよね?」
不安げな顔で私のことを見てくる棗くん。
こういう棗くんを見ると、いつも思う。
学校での棗くんは年相応に見えるのに、こうやってストレートに気持ちをぶつけてくる棗くんはあまりにも純粋すぎて、私よりも年下なのではないかと思うほど。
私は首元からチェーンを引き出す。
そして、そこにかけてある指輪を掴んで棗くんに見せた。