天才博士の恋愛理論
棗くんは、なぜか眠ろうとはしない。
私の言う通りだと言ってくれているのを聞くと、自分でもわかってはいるみたいなのに―――…
棗くんはスッと私を囲むようにして顔の横に置いていた手を離すと、その手で私の頬を撫でてくる。
「棗…くん?」
はじめは私の顔の輪郭をなぞるように触れていた手はゆっくりと首筋へと落ちていき、そのままどんどんと下へと降りていく。
そして、私のパジャマの合わせ部分に到着すると、ゆっくりと器用に片手だけでボタンをはずしていく。
「ちょ、ちょっと、棗くん!?」
さすがに、ここまでくると棗くんが何をしようと思っているのかその先のことがわかってくる。
私はあわてて、ボタンを外そうとしている棗くんの手を掴んだ。
手を掴んだ私と棗くんの視線が合わさる。
両者一歩も譲らない状態で、お互いに目と目で攻防を繰り広げる。
‟やめて!”
‟いやだ!”
そんな攻防が目と目を通して行われていたのだけど―――…
「昨日の夜は仕事が残ってたから、我慢した―――…」
棗くんは口を尖らせて、ついに不満を口にする。
そりゃね。
結婚しているわけだし、未だに全くそういう関係がないわけじゃない。
だから、棗くんが求めてくれるのなら、私だって期待に応えてあげたい。
だけどね―――…