天才博士の恋愛理論
後方の高い位置に座っている私には、そんな様子がよく見える。
この光景、どう見ても女子学生が、学年が上のかっこいい先輩を誘っている風にしか見えないから不思議。
毎日、すごいな~…。
頬杖をついた状態で、そんな様子を眺めていると、「瑞穂(みずほ)ちゃ~ん!」と大きな声で私を呼ぶ声に、ハッと講義室のドアへと視線を向けた。
「よ、吉田先輩……」
飛び跳ねるようにして、講義室に入ってきた先輩はちゃっかりと私の隣の席に座り、身を寄せてくる。
先輩が近づいてきた分、私はその隣へと体を離す。
「ねえねえ、今日って何か予定ある!?」
ここで、『ありません』と答えてしまうと、後々面倒なことになるのはわかりきったことなので、「はい…」と返す。
「え~~~!? 用事って何!? この前も、その前も、ず~っと瑞穂ちゃん、『用事がある』って、俺の誘いを断ってるじゃん。今日こそは、俺の誘いを受けてよ」
そう言いながら、先輩は机の上に置いていた私の右手をギュッと握ってくる。
いやいや。
そこまで断られてるのだから、気づこうよ。
誘っても無駄だということを。
それと、この手も―――…
明るくて、ノリのいい吉田先輩。
顔もかっこいい部類に入り、実は校内にはファンも多い…らしい。
確かに、明るいし人懐っこい感じ。
まあ、個人的にはスキンシップが激しいところが気になるけど―――…